AIの名前が「SI」に変わる?トランプ大統領令の中身と「超知能」との違いをわかりやすく解説
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上杉 洸平 事業開発・SEO/AIO担当
株式会社Moji ビジネス開発・コンテンツマーケティング担当 鹿児島県出身。大学2年次から複数のスタートアップで長期インターンを経験し、営業・事業開発と0→1の立ち上げに携わる。2026年9月より、生成AI特化の開発会社・株式会社Mojiに参画。AI開発プロジェクトの事業開発と運営体制づくりを担当しながら、自社メディアのコンテンツ運用をリードしている。
「SI(スーパーインテリジェンス)」とは、米国政府が2026年9月からAIの代わりに使い始めた呼び名です。ただし大統領令上の定義は従来のAIと同じで、技術の中身は変わっていません。日本企業の実務への影響も、現時点ではほぼありません。
「AIの名前が変わったらしい」というニュースを見て、何が起きたのか気になった方も多いはずです。本記事では、ホワイトハウスが公開した大統領令の原文をもとに、事実関係を整理します。
この記事でわかること
- AIが「SI」と呼ばれるようになった経緯と、米国政府が挙げた理由
- 大統領令で何が変わり、何が変わらないのか
- 本来の「超知能(ASI)」との違いと、日本企業が押さえるべきポイント
AIが「SI」に?何が起きたのか
AIからSIへの呼び名変更は、わずか10日ほどの間に、SNSの投票から大統領令の署名まで一気に進みました。
改名までの経緯
日付(米国時間) | 出来事 |
|---|---|
9月19日 | トランプ大統領がSNS「トゥルース・ソーシャル」で、AIの新名称を投票にかける。候補はSuperior Intelligence(SI)、Extreme Intelligence(EI)、Supreme Intelligence(SI)の3つ |
9月22日 | 国連総会の演説で「Super Intelligence(SI)」への言い換えを提唱。米国の公文書で使うと宣言し、他国にも同調を呼びかける |
9月22日〜 | 国務省の国際機関担当局が、外交官に「すべての発言・文書でSIを使う」よう指示(AP通信の報道) |
9月25日 | 米中首脳会談。ホワイトハウスのファクトシートには「両国がSIと呼ぶことで合意」とあるが、中国国営メディアの発表は「人工知能」のまま |
9月29日 | 大統領令「Inaugurating the Era of Super Intelligence」に署名 |
なぜ改名したのか
米国政府の主張は、主に次の2点です。
- 言葉が技術に追いついていない:「artificial(人工の)」という語は知能を偽物のように聞こえさせる。今の技術は、AIという言葉が生まれた当時の想定をはるかに超えている
- 米中の技術競争:トランプ大統領は国連演説で、米国が中国をリードしていると強調し、この技術の覇権を勝ち負けの問題として語っている
つまり今回の改名は、技術の進歩を受けた学術的な再定義ではありません。米国政府の姿勢を示すための呼び名の変更です。
大統領令の中身:変わるのは「呼び方だけ」
9月29日の大統領令は全4条の短いものです。結論から言うと、変わるのは米国の行政府が使う用語だけで、技術の定義も法律上の扱いも変わっていません。
条文のポイント
条文 | 内容 |
|---|---|
第1条 目的 | 今の技術は「AI」という言葉が生まれた当時の想定を超えているとし、行政府はAIの代わりにSIを使う方針を示す |
第2条 実施 | 各省庁は公式文書・広報・Webサイト・報告書などでAIをSIに置き換える。ただし、既存の規則・契約・過去の文書を書き換える必要はない |
第3条 定義 | SIの定義は、既存の連邦法(合衆国法典15編9401条(3))にあるAIの定義と同じ。60日以内に、SIの新たな法的定義の立法案を大統領に提出する |
第4条 一般規定 | この命令によって、誰かに法的な権利や利益が生じることはない |
ポイント1:定義は従来のAIとまったく同じ
第3条にあるとおり、SIが指すのは「これまで法律でAIと呼んできた技術」そのものです。ChatGPTやClaude、Geminiなどの生成AIも、画像認識や需要予測のAIも、呼び方がSIになるだけで中身は同じです。
ポイント2:対象は米国の行政府だけ
大統領令が拘束するのは、米国の連邦政府機関です。米国の民間企業にも、日本を含む他国にも、呼び方を変える義務はありません。
ポイント3:今後の定義変更には注意
一方で、第3条には「60日以内に新しい法的定義の立法案を出す」とあります。今後、SIの定義がAIより広くなったり狭くなったりする可能性はゼロではありません。11月下旬ごろの続報は押さえておく価値があります。
本来の「スーパーインテリジェンス(超知能)」との違い
今回いちばん混乱しやすいのが、「スーパーインテリジェンス」という言葉がもともと別の意味で使われてきた点です。
AI研究の分野では、スーパーインテリジェンス(ASI:人工超知能)は「あらゆる面で人間の知能を上回るAI」を指します。哲学者ニック・ボストロムらが体系化した概念で、現時点では実現していない、将来の可能性として議論されてきました。
一方、今回の大統領令でいう「SI」は、今すでにあるAI全般の呼び替えです。同じ言葉で別のものを指しているため、ニュースを読むときは注意が必要です。
AI(従来の呼び名) | SI(米国政府の新しい呼び名) | ASI(研究上の超知能) | |
|---|---|---|---|
指すもの | 今あるAI技術全般 | 今あるAI技術全般(AIと同じ) | 人間をあらゆる面で上回る将来のAI |
定義の根拠 | 米連邦法など | 大統領令(中身は米連邦法のAIの定義) | 研究者による学術的な概念 |
主に使う人 | 世界中の政府・企業・研究者 | 米国の行政府 | AI研究者・AI安全性の議論 |
実在するか | する | する(AIと同じもの) | まだ実現していない |
よくある誤解
- 誤解1:「AIが超知能に進化した」 → 技術の進歩を宣言したものではありません。中身は同じで、呼び名が変わっただけです
- 誤解2:「世界中で名称が変わった」 → 変わったのは米国の行政府の用語だけです。中国は米中首脳会談の後も「人工知能」と表記しています
- 誤解3:「AIの規制が強化された」 → この大統領令に、規制や安全管理に関する条文は含まれていません
背景:米国のAI安全管理は「企業の自主性」が前提
一部の報道では、今回の改名とあわせて「AIの安全管理は企業任せになるのでは」という論点も取り上げられています。ただしこれは、9月29日の改名の大統領令とは別の話です。主に次の2つが背景にあります。
6月の大統領令:公開前の検査は「任意」
2026年6月2日、トランプ大統領は「高度なAIのイノベーションとセキュリティの促進」と題する大統領令に署名しました。AI企業が最新モデルを公開する前に政府へ提供し、安全性の検査を受けられる枠組みです。
ただし、参加は企業の任意です。当初案では「公開の最大90日前」の提供を求めていましたが、業界の反発を受けて「30日前」に縮小されました。条文にも、政府による強制的な許認可制度をつくるものではないと明記されています。
国連演説:「リスクを理由に成長を抑えない」
トランプ大統領は9月22日の国連演説で、AIが制御不能になるという懸念を「でっち上げ」と退けました。新たな国際的な管理の枠組みにも否定的な立場です。
整理すると、米国は「規制で縛るより、企業の自主的な協力に任せて競争力を優先する」路線をとっています。今回の改名も、この路線の延長にあるメッセージと読むことができます。一方で、AIの安全性をめぐる懸念は企業や専門家からも出ており、この路線が今後も続くかは注視が必要です。
日本企業への影響は?
結論として、日本企業の実務への影響は現時点でほぼありません。 社内文書・提案書・求人票・自社サイトの表記は、これまでどおり「AI」で問題ありません。
2026年10月2日時点で、日本政府が呼び名を変える方針を示したという情報は確認できていません。
それでも押さえておきたい3つのポイント
- 米国政府と取引する企業は表記に注意:米国の政府機関とやりとりする英文の資料では、今後「SI」表記が増えます。相手の文書で「SI」と書かれていても、中身はAIのことだと理解しておけば十分です
- 米国の政策の方向性は日本にも波及する:米国が「規制より競争」の路線をとることは、主要なAIサービスの提供スピードや機能に影響します。そうしたサービスを使う日本企業にも、間接的に関わってきます
- 60日後の新しい定義に注目:大統領令にもとづく新しい法的定義の立法案しだいで、「SI」の範囲が変わる可能性があります
「SI」の報道を読むときのチェックリスト
- その「SI」は米国政府の用語か、研究上の「超知能(ASI)」か
- 法的な定義が変わったという話か、呼び名だけの話か
- 対象は米国の行政府か、民間企業や他国も含む話か
- 改名の話と、規制・安全管理の話が混ざっていないか
まとめ
- SIは、米国政府が2026年9月29日の大統領令で採用したAIの新しい呼び名。定義は従来のAIと同じ
- 研究分野でいう「超知能(ASI)」とは別物なので、報道を読むときは区別が必要
- AIの安全管理を企業の自主性に任せる米国の路線は、改名とは別の大統領令や発言によるもの
- 日本企業は当面、対応不要。ただし60日後の新しい定義と、米国のAI政策の動向は注視したい
呼び名が変わっても、業務でAIをどう活かすかという課題は変わりません。Mojiでは、AIを活用したシステムの受託開発や導入支援を行っています。自社の業務にAIをどう取り入れるべきか迷ったら、お気軽にご相談ください。
出典
- Inaugurating The Era Of Super Intelligence(The White House, 2026年9月29日)
- トランプ大統領、「人工知能の名称変更」を提案(Forbes JAPAN)
- AI名称「超知能」を提案 トランプ氏「偽物っぽい」(共同通信/熊本日日新聞)
- US diplomats told to use term 'super intelligence'(AP/ABC News)
- トランプ氏がAIを「SI」と呼ぶことで習近平氏と合意、ただし中国発表は「人工知能」のままだった(hashout)
- Trump signs scaled-back executive order on AI oversight(NewsNation)
- 最先端AIを事前に検証する大統領令が発効(東洋経済オンライン)
- スーパーインテリジェンスとは何か(issoh)
- 日テレNEWS「【トランプ大統領】『SI(=超知能)言い換え』大統領令に署名も」(YouTube、埋め込み候補)
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