CAISSIとは?米国のSI評価機関の役割と、上院議員が求める「独立テスト」で何が変わるか
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上杉 洸平 事業開発・SEO/AIO担当
株式会社Moji ビジネス開発・コンテンツマーケティング担当 鹿児島県出身。大学2年次から複数のスタートアップで長期インターンを経験し、営業・事業開発と0→1の立ち上げに携わる。2026年9月より、生成AI特化の開発会社・株式会社Mojiに参画。AI開発プロジェクトの事業開発と運営体制づくりを担当しながら、自社メディアのコンテンツ運用をリードしている。
CAISSI(Center for Advancing Innovation and Standards for Super Intelligence)は、米国立標準技術研究所(NIST)にある、最先端AIの評価と標準づくりを担う政府機関です。2026年10月13日、超党派の上院議員2人が、CAISSIを中心に「独立したテスト」の体制を広げるよう政府に求めました。AIは「作った会社が自分で評価する」時代から、「第三者が評価する」時代へ移りつつあります。
この記事のポイントは次の3つです。
- CAISSIは、AIを「SI(スーパーインテリジェンス)」と呼ぶ大統領令を受けて名称が変わった、旧CAISI(さらに前はAI安全研究所)
- 今の仕事は、企業との「任意の協定」に基づく評価と、中国製モデルなどの安全保障リスクの分析が中心
- 上院議員は、予算と人員の強化、国立研究所や民間の第三者評価機関を巻き込んだ「テストの生態系」づくりを求めている
CAISSIとは:名前が2度変わった米国のAI評価機関
CAISSIは、米商務省僘下のNISTに置かれた組織です。公式サイトでは、「SIシステムのテストと共同研究において、産業界にとって政府内の主な窓口」と位置づけられています。
組織自体は新しくありません。政権の方針に合わせて、名前が2度変わっています。
時期 | 名称 | 変化 |
|---|---|---|
2026年10月 | CAISSI(Center for Advancing Innovation and Standards for Super Intelligence) | 大統領令でAIの呼称がSIに変わり、名称に反映 |
2025年6月 | CAISI(Center for AI Standards and Innovation) | 名称から「Safety(安全)」が消え、「Innovation(革新)」を前面に |
2023年 | 米国AI安全研究所(U.S. AI Safety Institute) | バイデン政権下で設立 |
直近の変更のきっかけは、2026年9月29日の大統領令「Inaugurating the Era of Super Intelligence」です。この令で、政府内の「AI」という呼び方が「SI」に置き換えられました。ただしSIの意味は、従来の法律上のAIの定義と同じです。中身は変わらず、名前だけが変わったということです。
AIとSIの呼称の違いについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
CAISSIの役割:何を評価しているのか
CAISSIの仕事は、大きく分けて次の4つです。
- 任意の協定による評価:AI開発企業と協定を結び、サイバー攻撃や生物・化学兵器に悪用されるリスクを評価する
- 海外モデルの分析:中国製モデルなどの性能や、バックドアなどの危険性を調べる
- ガイドラインづくり:AIの安全性を測る方法や、任意の標準を産業界と作る
- 国際標準での主導権確保:海外の過度な規制から米国企業を守る
実際の評価実績としては、2026年だけでもDeepSeek V4 Pro(5月)、Z.aiのGLM-5.2(7月)、Kimi K3(7月、英国AISIと共同)、GLM-5.3(9月)など、中国系モデルの評価結果を公開しています。
重要なのは、CAISSIの評価は「義務」ではなく「任意」だという点です。米国企業は協定に応じて評価を受けますが、評価を通らないと発売できないという仕組みではありません。
規模も小さい組織です。複数の関係者によると職員は50人未満で、下院でも予算の大幅増額を求める声が上がっています。
上院議員が求める「独立テスト」とは
2026年10月13日、民主党のマリア・キャントウェル上院議員と共和党のマイク・ラウンズ上院議員が、ホワイトハウスのSIタスクフォースと科学技術政策局に書簡を送りました。超党派である点がこの書簡の重みです。
背景にあるのは、AIエージェントが想定外の行動を取る事例です。書簡は、テスト環境からの脱出、安全装置の回避、監視の回避など、数万件規模の事例が調査されていると指摘しています。
書簡が挙げた優先事項は3つです。
- 標準の強化:CAISSIに予算と専門人材を与え、測定可能な安全基準を急いで作る
- 独立テストの拡大:政府が自らモデルをテストできる体制を作り、民間も含む第三者評価で補う
- 防御用AIの推進:脆弱性の発見や修正にAIを使う
「独立テスト」の中身を、今の仕組みと比べると次のとおりです。
観点 | 現状 | 上院議員の提案 |
|---|---|---|
誰がテストするか | 開発企業自身が中心。CAISSIは少人数で協定ベース | CAISSI、エネルギー省の国立研究所、大学、研究機関、資格を持つ民間の評価機関 |
何をテストするか | サイバー、生物・化学兵器など | 従来に加え、重要インフラへのリスク、安全装置の回避、自律的な行動 |
結果をどう検証するか | 明確な仕組みはない | 共通の基準をもとに、独立した監査で「テストが正しく行われたか」を確かめる |
つまり上院議員が求めているのは、「開発企業の自己申告を信じる」状態から、「基準→テスト→監査」の三段構えで確かめる状態への移行です。ただしこの書簡は「要望」であり、法律ではありません。
独立テストで何が変わるか
提案が実現すれば、AIの「安全です」に第三者の裏付けが求められるようになります。影響は立場ごとに異なります。
- AI開発企業:発表前に外部の評価を受けるのが当たり前になる。テスト環境そのものの安全性も問われる
- AIを使う企業:「どの評価を通ったモデルか」が、導入時の選定基準に加わる
- 評価を担う企業・研究機関:「資格を持つ第三者評価機関」として、新しい市場が生まれる
日本企業にも無関係ではありません。日本で使われているChatGPTやClaude、Geminiはいずれも米国企業のモデルです。米国で評価の基準が固まれば、その基準が事実上の世界標準になる可能性が高いです。日本のAIセーフティ・インスティテュート(J-AISI)の動きにも影響するでしょう。
一方で、実現には壁もあります。CAISSIは50人未満の小さな組織で、政権は規制より革新を重視しています。予算がつくか、法律になるかを注視する必要があります。
自社のAIも「評価する」時代へ
CAISSIの議論は国家安全保障の話ですが、根っこにある問いは企業も同じです。「このAIは、本当に想定どおりに動いているのか」という問いです。
CAISSI自身も、AIが評価で「ズル」をして点数を上げる問題を報告しています。評価は「やれば安心」ではなく、設計の仕方で信頼性が大きく変わります。
社内でAIエージェントを運用する企業も、次のような評価が必要になります。
- 回答の正確さを、モデル更新のたびに測り直しているか
- 情報漏えいや権限外の操作など、リスクのある動きを検知できるか
- 評価結果を、社内や取引先に説明できる形で残しているか
株式会社MojiのAI評価クラウドは、AIエージェントの精度評価やリスク管理を支援するサービスです。「自社のAIをどう評価すればいいか分からない」という段階から、お気軽にご相談ください。
まとめ
- CAISSIは、NISTにある米国のAI(SI)評価機関。旧CAISI、その前は米国AI安全研究所
- 今は企業との任意の協定による評価と、海外モデルの分析が中心
- 上院議員は、「基準→独立テスト→監査」の体制づくりを超党派で求めている
- AIの安全性は「自己申告」から「第三者の評価」へ。この流れは企業のAI運用にも広がっていく
出典
- Center for Advancing Innovation and Standards for Super Intelligence (CAISSI)(NIST)
- Cantwell, Rounds Urge White House to Build Strong, Coordinated Approach to AI Safety & Cyber Defense(米上院商務委員会)
- Senators press Trump admin to rally federal government around AI safety, security(CyberScoop)
- CAISSI Questions & More Model Mischief(Puck)
- Executive Order 14434: AI Renamed Super Intelligence(iternal.ai)
- Cheating On AI Agent Evaluations(NIST CAISSI Research Blog)