源内とは?ガバメントAIの機能・利用条件・企業が参考にする安全な試し方

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2026年10月21日時点で、源内(げんない)はデジタル庁が企画・開発・提供・運用する、政府職員向けの生成AI利用環境です。単なるチャットAIではなく、行政実務用のAIアプリ、文書・データを扱うAIエージェント利用環境、業務手順を再利用可能な「スキル」として共有する仕組みを段階的に整備しています。

ただし、民間企業がデジタル庁のホスト環境をそのまま契約して利用できる、という公式案内は確認できません。2026年4月には源内の一部が商用利用可能なライセンスでOSS公開されており、AIエージェント向けの「源内OSS Ver.2.0」は2027年2月頃に公開予定です。したがって企業が今すぐ検討できるのは、政府向けホスト環境の利用ではなく、公開済みOSSの確認、または源内基準を自社のAIガバナンス・PoC設計へ応用することです。デジタル庁:源内OSSの公開/デジタル庁:AIエージェント利用環境と源内基準

結論:源内から企業が学べるのは「製品名」よりも運用設計

源内を参考にする際、重要なのは「AIエージェントを導入する」こと自体ではありません。業務ごとに、入力してよい情報、AIに許可する操作、人が確認する地点、ログの扱い、停止条件を対応付けることです。

源内基準は、AIの出力を無条件に採用せず、利用者が内容・根拠・限界・リスクを確認し、最終的な判断と責任を担う考え方を示しています。国民の権利利益、安全、生活へ影響する業務では、リスクに応じて人の確認・監督・承認・介入・停止を可能にする仕組みが必要とされています。源内基準(第1版、2026年10月)

これは民間企業でも有用な出発点です。たとえば、社内文書の比較・下書き作成と、顧客への送信、価格変更、採用判断、支払確定を同じ自動化レベルで扱うべきではありません。外部への影響が大きく、元に戻しにくい操作ほど、権限を狭くし、人の承認を前に置く必要があります。AIエージェントに任せる範囲の分け方は、AIエージェントのガードレール設計も参考にしてください。

源内とは:政府職員向けの生成AI利用環境

デジタル庁は、源内を政府職員による安全・安心なAI利用を確保しつつ、行政業務の効率化、品質向上、費用対効果の向上を目指す生成AI利用環境として位置付けています。2026年5月からは、全府省庁の約18万人の政府職員を対象とした大規模実証を開始しました。デジタル庁:大規模実証開始のお知らせ

公式の源内ページでは、汎用AIと行政実務用AIを分けています。前者は対話型チャット、文章作成、要約、校正、翻訳などを支援するツール群です。後者は、法令・制度調査、国会答弁作成支援、公用文校正、補助金制度調査など、行政実務に対応するアプリケーションとして説明されています。なお、掲載されているアプリや利用条件は時点・所属組織・環境によって変わり得るため、個別の利用可否を一般化しないことが必要です。デジタル庁:ガバメントAI「源内」

源内で公表されているAIエージェント利用環境

2026年10月20日の発表で、デジタル庁は約18万人の政府職員を対象に、次の2種類のAIエージェント利用環境を提供すると案内しました。

名称

公式上の位置付け

確認できる主な用途

提供状況(2026年10月21日時点)

エージェントチャット

手軽にAIエージェントを作成・実行する環境

調査、資料作成、複数ファイルの照合、結果のファイル出力、スキル作成

各府省庁等へ順次導入

源内工房

高度なAIエージェントを構築・実行する環境

Web情報収集、ファイル操作、コマンド実行、プロトタイプ開発、スキル作成・改変

2026年12月頃の導入を目標

源内ライブラリ

スキル等を政府横断で共有する構想

業務手順・判断基準・参照資料・例外処理をスキル化し、共有・再利用する

資料で仕組みと利用イメージを公表

エージェントチャットは、複数タスクをまとめて実行し、成果物をファイルやドキュメントとして出力できる環境として説明されています。源内工房は、任意サイトへの直接アクセス、複数サイトを対象にした情報収集・比較・統合、ファイル操作やコマンド実行を連鎖させる処理、動作するプロトタイプの開発などを想定しています。デジタル庁:AIエージェント利用環境の導入資料

ここで注意したいのは、機能が高度になるほど、単発の生成品質だけでは導入可否を決められない点です。モデル、入力文書の品質、接続するツール、操作権限、人の確認方法、評価指標、許容できない失敗によって結論は変わります。AIエージェントと通常の生成AI・RPAの使い分けは、AIエージェントとは?で整理しています。

利用条件:確認できることと、確認できないこと

確認できること

  • 源内は政府職員等を対象にした環境であり、2026年度は全府省庁約18万人を対象とする大規模実証として展開されています。
  • デジタル庁における源内は、政府統一基準に準拠したセキュリティのもと、機密性2情報を含むプロンプト入力に対応すると案内されています。ただし、実際の入力範囲は利用環境、接続モデル、アプリ機能、各府省庁等のルールで定める必要があります。
  • 源内基準では、原則として国内データセンターで推論処理・関連データ保存を行い、入力データ・添付ファイル・出力データを基盤モデルの学習等に使わないことを契約で確保するとしています。例外的に海外データセンターで推論する選択肢を設ける場合も、利用者と管理者へリスク・留意事項を明確に説明する方針です。

これらは源内の政府向け環境・基準に関する説明です。自社で別のAIサービス、クラウド、OSS、モデルを使う場合に同等の条件が自動で満たされるわけではありません。契約、リージョン、学習利用、ログ、サブプロセッサー、ID連携、外部ツール接続を個別に確認してください。源内基準:情報・データの取扱い

現時点で確認できない、または一般化できないこと

  • 民間企業がデジタル庁ホスト方式の源内を直接利用するための申込み、料金、SLA、契約条件
  • 企業がエージェントチャットまたは源内工房を、政府向け環境と同じ仕様・運用条件で利用できるか
  • 2027年2月頃に予定される源内OSS Ver.2.0の公開範囲、実装手順、サポート、互換性、セキュリティ責任分界
  • 個別の行政実務用AIアプリを、民間業務へそのまま転用できるか

公開済みの源内OSSと、今後公開予定のAIエージェント利用環境向けOSSは区別してください。2026年4月に公開されたものは「源内の一部」であり、2026年10月の発表ではエージェントチャットと源内工房を含む源内OSS Ver.2.0を2027年2月頃に公開予定としています。既存OSSの公開情報/Ver.2.0の公開予定

企業が源内を参考にする導入判断基準

以下は、源内基準の考え方を民間企業のPoCへ翻訳したMojiによる実務上の提案です。法令適用、個人情報、業界規制、契約上の義務は、自社の法務・情報セキュリティ・個人情報保護担当者と確認してください。

判断軸

最初の試行に向く状態

先に設計・制限すべき状態

業務の可逆性

下書き、要約、比較表、論点抽出、社内向け調査メモ

送信、公開、契約、支払、価格変更、採否、顧客データ更新

入力情報

公開情報、承認済みの社内資料、匿名化・マスキング済みデータ

個人情報、営業秘密、認証情報、未公表の取引情報、規制対象データ

外部操作

読み取り専用、ローカルな成果物作成、人への提出

メール送信、DB更新、ファイル削除、購買、権限変更、外部API書込み

正しさの確認

原典・計算結果・差分を担当者が短時間で確認できる

正解が曖昧、確認に専門資格が必要、誤りの検知が遅い

評価可能性

過去案件から評価ケースを作れ、合格・不合格を決められる

「便利そう」以外の成功基準がなく、失敗の記録方法もない

一般的な設計上の目安として、最初のPoCは「社内資料を読み、比較・抽出・下書きを作る」までに留めると、失敗時の影響を抑えやすくなります。一方、同じ資料処理でも、入力品質や文書の信頼性が低い、権限が混在する、出力をそのまま対外利用する、といった条件ではリスクが高くなります。

安全に試すための5ステップ

  1. 対象業務を1工程に絞る
    「問い合わせを自動化する」ではなく、「担当者が社内規程を探し、回答案を作る前の論点抽出」のように、開始点・終了点・人へ渡す地点を固定します。
  2. 入力可能なデータを分類する
    公開可、社内限定、要マスキング、持込み禁止の4区分など、自社で判断できる分類を作ります。最初は公開情報または匿名化済みの資料を使い、実データでの検証を急がないことが重要です。
  3. AIの権限を読み取り専用にする
    初回は、メール送信、顧客DB更新、ファイル削除、外部サービス購入、権限変更を許可しません。ツール連携を使う場合も、対象システム・対象フォルダ・実行可能な操作を絞ります。API、MCP、A2Aの接続範囲を検討する場合は、API・MCP・A2Aの違いも確認してください。
  4. 評価ケースと停止条件を先に作る
    過去の代表案件、例外案件、誤りが許されない案件を混ぜて評価します。「根拠がない断定」「参照権限外の情報」「指定外の外部操作」「必須項目の欠落」を停止・差し戻し条件として明文化します。
  5. 限定利用後に拡大・修正・中止を判断する
    利用回数だけで成功とせず、処理時間、手戻り、根拠確認の負荷、見逃し、利用者の差し戻し理由、運用担当の負荷を記録します。評価結果から、対象業務を広げるか、権限を追加するか、中止するかを決めます。

PoC用の依頼テンプレート

以下はMojiによる提案です。AIに渡す指示だけでなく、対象資料、禁止操作、確認者、成果物の利用目的をセットで記録します。

【目的】
社内規程Aと手順書Bの差分候補を抽出し、担当者の確認用一覧を作る。

【対象資料】
承認済みの社内資料のみ。最新版の版数・更新日を確認する。

【してよいこと】
・資料を読み、項目ごとの差分候補を表にする
・根拠のページまたは見出しを併記する
・不明な箇所は「要確認」と表示する

【してはいけないこと】
・資料にない内容を補完して確定事項として書かない
・外部サイト、メール、社内システムにアクセス・送信・更新しない
・最終版として公開可能な文書を作ったと判断しない

【成果物】
差分候補/根拠箇所/確信度ではなく要確認理由/担当者確認欄を含む表。

【人の確認】
業務責任者が根拠箇所を確認し、採用・修正・棄却を記録する。

このテンプレートで重要なのは、AIに「正しく答える」よう求めるだけでなく、根拠を出せない場合の扱い、禁止操作、人が最終判断する場所を指定することです。生成AIの出力の正確性を運用で担保する方法は、生成AIの正確性課題への評価・承認・改善フローも参考にしてください。

評価チェックリスト

次のチェックリストもMojiによる提案です。比較結果は、利用モデル、プロンプト、検索対象、入力品質、評価指標、許容誤差によって変化します。同じ条件で候補を比較し、モデル名だけで結論を出さないでください。

  • 対象業務の開始・終了・責任者を一文で説明できる
  • AIが参照してよい文書・データと、参照してはいけない範囲を分けた
  • 出力の採用前に、誰が何を確認するかを決めた
  • AIに許可する操作を「読み取り」「下書き作成」「書込み」「外部送信」に分けた
  • 外部操作は初期段階では無効化、または人の承認付きにした
  • 信頼性が不明なファイルを取り込む前に、出所・用途・必要性を確認する手順がある
  • 出力、ツール実行、承認・差し戻し、失敗を追跡できる記録方法がある
  • 誤回答、権限逸脱、意図しない操作、コスト超過が起きた場合の停止担当者がいる
  • 評価ケースに通常例だけでなく、例外・欠損・矛盾・権限不足のケースを含めた
  • 限定試行後に拡大・修正・中止を判断する日程と基準がある

源内の公式教材でも、AIの出力は必ず利用者自身が確認すること、信頼性が不明なファイルの読み込みに注意すること、情報の機密性は所属機関のルールに従って判断することが示されています。特に外部ファイルには、見た目では分かりにくい悪意ある指示が含まれる可能性があるため、出所を確認してから読み込ませる必要があります。デジタル庁:エージェントチャット中級編

源内を自社導入の根拠にしないために

源内は、行政実務、政府統一基準、政府職員向けのID・運用体制を前提に設計されています。そのため、「源内が機密性2情報を扱えるから、自社の一般向けAIサービスにも機密情報を入力してよい」とは言えません。安全性はAIの名称ではなく、データ経路、契約、保存・学習利用、アクセス権、接続ツール、ログ、運用ルールの組合せで決まります。

企業にとっての実務的な使い方は、源内をそのまま導入対象とみなすのではなく、①人が最終判断する、②利用者・管理者・開発者の責任を分ける、③高度な操作ほど権限・承認・停止を設ける、④検証結果を残して改善するという設計原則を自社のAI利用台帳とPoCへ反映することです。組織横断で用途・データ・権限・評価を管理する方法は、AI利用台帳、経営・責任者が導入可否を判断する枠組みは、AIガバナンスで詳しく解説しています。

まとめ

  • 源内は、デジタル庁が提供する政府職員向けの生成AI利用環境であり、行政実務用AIとAIエージェント利用環境を段階的に整備している。
  • 2026年10月21日時点で、エージェントチャットは各府省庁等へ順次導入、源内工房は2026年12月頃の導入目標と案内されている。
  • 民間企業がデジタル庁ホスト方式の源内を直接利用できるという条件は、公式情報から確認できない。
  • 源内の一部OSSは2026年4月に公開済みだが、エージェントチャット・源内工房を含む源内OSS Ver.2.0は2027年2月頃の公開予定である。
  • 企業は、低リスク・読み取り中心・人の確認が可能な業務から試し、入力、権限、承認、停止、ログを先に設計する。

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