AIの文章に「見えない透かし」。ClaudeとGrokで何が変わるのか、海外の議論と就活ESへの影響も整理

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事業開発・SEO/AIO担当

株式会社Moji ビジネス開発・コンテンツマーケティング担当 鹿児島県出身。大学2年次から複数のスタートアップで長期インターンを経験し、営業・事業開発と0→1の立ち上げに携わる。2026年9月より、生成AI特化の開発会社・株式会社Mojiに参画。AI開発プロジェクトの事業開発と運営体制づくりを担当しながら、自社メディアのコンテンツ運用をリードしている。

11月3日から、Claudeの古いモデルにも文章の「見えない透かし」が入り始めました。11月7日からは、xAIのGrok APIでも透かしが最初からオンになります。どちらも、2026年8月に適用が始まったEU AI法の第50条(AIが作った内容をそれと分かるようにする義務)への対応です。

この記事では、今回のアップデートの中身を企業の目線で整理します。あわせて、海外での議論と、Xで話題の「就活のESをAIで書いたらバレる?」にも答えます。

  1. 透かしは人の目に見えるのか
  2. 自分たちで検出できるのか
  3. 言い換えたら消えるのか
  4. 社内でAIを使って作った資料に影響はあるのか

そのうえで、海外の議論と就活のESへの影響をまとめます。

何が起きているのか

「今日から全部に透かしが入る」わけではありません。Claudeの新しいモデルには、すでに透かしが入っています。11月3日は、それが古いモデルに広がった日です。

項目

Claude(Anthropic)

Grok API(xAI)

すでに対象

Opus 5.5、Sonnet 5.5、Haiku 5.5、Mythos 5.1、Fable 5.1など9モデル(10月31日時点)

なし

今回対象になるモデル

Mythos 5、Opus 4.7、Opus 4.6、Sonnet 4.6

grok-4.7、4.6、4.5、4.3、4.20系3モデル(計7モデル)

開始日

2026年11月3日(Amazon Bedrockは数日遅れる可能性)

2026年11月7日

開始日が未定

Opus 4.5、Sonnet 4.5、Haiku 4.5

―

外から分かる目印

見当たらない

レスポンスのx-watermark: trueヘッダー

止められるか

―

チーム管理者がモデルごとに可能。法律上の例外に当たることの確認が必要。止められないモデルもある

出典:CellCog、Presenc AI

EU AI法は、透かしだけを求める法律ではありません。第50条が「AIが作ったと分かるようにする」義務なら、第17条は高リスクAIの提供者に品質管理の仕組みを求めています。後者の具体的な進め方は、「EN 18286とは?EU AI法の品質マネジメント規格をわかりやすく解説」でまとめています。

そもそも文章の「透かし」とは

文章の透かしは、言葉の選び方に混ぜた統計的なクセです。紙幣の透かしのような、目に見える印ではありません。

AIは文章を書くとき、次に来る言葉の候補を確率つきでいくつも持っています。たとえば「重要な」「大切な」「肝心な」のように、どれを選んでも意味が通る場面はよくあります。透かしを入れるAIは、秘密の鍵にもとづいて、その中の特定の候補を少しだけ選びやすくします。

一つひとつの選択は自然なので、読んでも違和感はありません。ただ、文章全体では「鍵が好む言葉」が偶然では説明できないほど多くなります。検出ツールは鍵を使ってその偏りを数え、「透かしあり」「なし」「判定できない」の3つのどれかを返します。

この仕組みを押さえておくと、次の4つの問いの答えはほぼ自然に出てきます。

問い1:透かしは人の目に見えるのか

見えません。特殊な文字や記号を足すのではなく、言葉の選び方そのものに入っているからです。

  • 読んでも、透かしのある文章とない文章の区別はつきません
  • コピー&ペーストしても消えません。見えない文字を取り除くツールを通しても同じです

問い2:自分たちで検出できるのか

今はできません。検出には鍵が必要で、両社とも検出ツールを申請制にしているからです。

  • Claude:公開のチェッカーはありません。検出は限定公開のAPIで、対象は規制当局、報道機関、ファクトチェッカー、研究者、教育機関、同じ義務を負う企業などです。専用フォームから申請します
  • Grok:xAIの検出サービスも申請制です。結果は「あり」「なし」「判定できない」の3つです

画像は事情が違います。Claudeが出力するPNGやJPEGには、C2PAという規格の証明情報が付きます。こちらはAnthropicの無料ツールやC2PA対応ツールで誰でも確認できます。ただし、スクリーンショットや保存し直しで消えることがあります。

日本でも、透かしは無関係ではありません。2026年10月に届出が始まった政府の「生成AIプリンシプル・コード」では、生成AIの事業者が公開する知財保護の取り組みの例として、「電子透かしやC2PAなどの来歴技術」が挙がっています。自社サービスに他社のAIを組み込んでいる企業は、「生成AIプリンシプル・コードとは?対象企業・3原則・届出方法をわかりやすく解説」もあわせて確認してください。

つまり、「AIの文章かどうかを自分で確かめる」ことは、今のところ一般の企業にはできません。「全文を透かしでチェックできます」とうたうサービスは、一度疑ってかかったほうが安全です。

問い3:言い換えたら消えるのか

丸ごと書き直すと消えますが、少し手を入れた程度では残ります。言葉を入れ替えるほど「鍵が好む言葉」の偏りが崩れるからです。

文章の扱い

透かし

コピー&ペースト

残る

誤字脱字や文法の校正

たいてい残る(変わる言葉が少ない)

人が少し手直し

おそらく検出できる

Claudeで翻訳

残る

全文を別の言葉で書き直し

消える

あわせて知っておきたいのは、判定の限界です。

  • 短い文章は、数える材料が足りず判定しにくい
  • コードは透かしが入りにくい
  • 「透かしあり」でも、完全な証拠にはならない
  • 「透かしなし」は、AIが書いていない証拠にはならない。透かしのないモデルや大きな手直し、短い文章の可能性があるため

問い4:社内でAIを使って作った資料に影響はあるのか

見た目や使い勝手は変わりません。ただ、検出できる立場の人が調べれば、AIが書いたと分かる可能性はあります。

  • 社内資料やメール:受け取った人が読んで気づくことはありません。検出ツールを使えるのも、今は申請が通った一部の組織だけです
  • 履歴書や提出物:受け取る側が検出できる立場なら、分かる可能性があります。ただし判定は確率的で、決定的な証拠にはなりません
  • EU向けの公開コンテンツ:透かしは「AIが作ったと分かるようにする」義務を支える仕組みです。自社の表示ルールの後ろ盾として使えます

開発チームは設定に注意

APIでOpus 4.6やSonnet 4.6を使っている場合は、設定に気をつけてください。報道によると、temperature、top_p、top_kのどれかを初期値から変えると、透かしがかからなくなります。エラーや警告は出ません。

Anthropicは顧客向けメールで「自社のコンプライアンスに透かしを使うなら、設定は初期値のままにしてほしい」と伝えたとされています。公式発表ではなく、修正の予定も示されていません。透かしを前提にしているなら、初期値のままにするのが安全です。

海外ではどう議論されているか

英語圏では、Claudeの透かしが始まった2026年8月から議論が続いています。論点は大きく、「仕組みに穴はないか」と「履歴書や出願書類にどう影響するか」の2つです。

論点

主な意見

設定ひとつで透かしが外れる

Opus 4.6とSonnet 4.6では、temperatureなどを変えると透かしがかからず、警告も出ない。透かしを前提に規制対応をする企業にとっては落とし穴になる

履歴書では透かしが出にくい

履歴書は社名や日付など変えようのない事実が多く、短い。言葉を選ぶ余地が少ないので、透かしはほとんど現れないかもしれない

「使ったか」より「申告と合っているか」

透かしは「Claudeを通した」ことしか示せず、文法チェックも丸ごと執筆も同じ印になる。本当のリスクは、大学のAIルールと自分の申告が食い違うこと

AIで書類は良くなるが、合格率は上がらない

オランダのティルブルフ大学の研究では、ChatGPTを使ったカバーレターは評価が高かったが、面接に呼ばれる数は増えなかった

出願コンサルは、検出ツールが広がれば「罰する」より「AIの使い方を申告させる」形が主流になると予想しています。書き換えずに残った文章は、後から調べられる可能性もあります。日本でいえば、次に見る就活のESがまさに同じ状況です。

就活のESはどうなる?AIで書いたらバレるのか

Xでいちばん話題になっているのがここです。結論から言うと、今のところ「透かしでバレる」可能性は低いです。ただ、透かしより気にすべきことがあります。

AIを使うのはもう当たり前

学情の調査(2027年卒の学生259人、2026年6月)では、就活で生成AIを「使っていない」学生は8.5%だけでした。用途でいちばん多いのは「ESや自己PRなどのブラッシュアップ」で、数6割が使っています。企業側も、採用ページの文章づくりに生成AIを使う割合が38.5%に増えています(前年21.0%)。

ESに透かしは入る。ただし判定される可能性は低い

  • 検出ツールは申請制で、今の対象は規制当局や報道機関、同じ義務を負う企業などです。採用担当者がESを一通ずつかけられる状況ではありません
  • ESは数百字と短く、そもそも判定が難しい長さです
  • とはいえ、自分で書いてAIで校正しただけでも透かしは残りえます。「少し手直しすれば大丈夫」という話ではありません

本当に見られているのは「自分の言葉で語れるか」

AIでESの文章水準がそろい、文章力で差がつきにくくなっています。その分、面接や動画選考で「自分の言葉で語れているか」が重視されるようになったと報じられています。ESに書いたことを面接で深掘りされて答えられなければ、透かしがなくても伝わります。

「AIに相談する」と「AIに直させる」で、透かしの残り方が変わる

透かしが入るのは「AIが出力した文章」だけです。つまり、同じ「AIを使った」でも、使い方によってESに透かしが残るかどうかが変わります。

ESでのAIの使い方

ESに透かしが残るか

深掘りの質問をしてもらい、文章は自分で書く

残らない

構成や弱点を指摘してもらい、自分で直す

残らない

自分の下書きをAIに推敲させ、そのまま使う

残りうる

AIに一から書かせる

残る(ClaudeやGrokなど、透かし対象のモデルの場合)

もう一つ、見落とされがちな点があります。これまでは「AI判定ツールは誤判定があるから、それだけで落とされることはない」とよく言われてきました。これは文体から推測する従来のツールの話です。透かしは鍵と照合するので、文体からの推測より根拠がはっきりしています。検出が広がるほど、「誤判定があるから大丈夫」という前提は成り立たなくなっていきます。

だからこそ、AIは相談相手として使い、ESの文章は自分で書くのがいちばん安全です。透かしの面でも、面接で深掘りされたときの面でも同じ結論になります。

採用する側も同じです。「透かしなし」はAIが書いていない証拠にならず、「あり」も決定的ではありません。透かしの有無で合否を決めるのは、今の仕組みでは無理があります。それより「AIを使ってよい範囲」を募集要項で示すほうが、学生にも企業にも公平です。

出典:学情「2027年卒 就職戦線中間総括」アンケート、マネー現代(2026年1月)

まとめ

11月3日からClaudeの古いモデルにも、11月7日からGrok APIにも文章の透かしが入ります。透かしは目に見えず、一般の企業は検出もできません。丸ごと書き直せば消えますが、校正や翻訳程度では残ります。

海外では、設定ひとつで透かしが外れる「穴」と、履歴書や出願書類への影響が議論されています。就活のESも、今すぐバレる可能性は低いものの、AIに文章を直させれば透かしは残りうる点は知っておきたいところです。企業も個人も、大切なのは「どこでAIを使ったかを説明できる状態」にしておくことです。

なお、この記事は公式情報と報道の整理です。検出ツールは申請制のため、透かしが実際に入っているかどうかは編集部では確かめていません。

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出典

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